こんにちは。
この間、近くのカフェで「昭和の犬」を見つけて懐かしくなりました。
姫野カオルコさん、10代から20代前半にかけて熱心に読んだっけ。特に、初期の処女三部作にはつらい気持ちを代弁してもらった気がして、大好きでした。
処女3部作の主人公はみんな、「わたしには女として価値がない。魅力がない。だから恋人ができない。でも男と付き合いたい」と悩んでいました。私も同じでした。中学生の頃いじめられてから、ずっとずっと自分はブスだと決めつけていて、初めて彼氏ができるまで苦しかったです。
私が乙女だった時代、雑誌やテレビの「モテ!!愛され!!」の押しつけはひどかったですね。女性は性的な目で見られ、品定めされ、選ばれなければ価値がない。そんな言外のメッセージが満ちあふれていました。そんななかで洗脳されて苦しかったなぁ。価値なんて、そもそも幻想なのに。もうだいぶ年を取ったけど、そういうステージから降りられてずいぶん楽になりました。若いってうらやましがられるけど、苦しいことだったなぁ。
姫野さんは他にも毒親のことも書いていて、当時家庭が荒れていた私にはとても共感できました。それから10年くらい愛読していましたが、次第に作品がおだやかなものになっていったのを感じていました。書くことにはデトックス効果があるんでしょうか。
昭和の犬は最近書かれた作品なので、初期のものより淡々としています。主人公イクの周りの大人や犬、猫との関りが穏やかにつづられていて、読んでいてじんわりとしみてきます。ラストのマロンちゃんが笑うシーン、「私の人生、恵まれていました」とイクが話すところ、とても良かったです。辛いことも多かった彼女が、それでも自分の人生を肯定するところ、きっと若いころに読んだら良さに気づかなかったと思います。中年になって、味わい深いものが好きになったなぁ。